月曜日

熱伝導気液転移:最後の一点をめぐる戦いの一つの焦点として、「相加性の破れ」がある。例えば、線形応答理論+素朴な相加性で、界面温度が転移温度と等しいことを示すことができる。つまり、変分原理の結果は、相加性の破れを必然的に伴うわけだが、逆に、その方向から整理できないか、という方向である。まず、相加性が破れるのがもっともらしい、という線形応答理論からの描像は分かる。で、それをレスペクトして組みなおして。。。

セミナー1:境界でのスリップ長をミクロ力学で表現するというのは、そう難しくはない。その結果は、非局所的になるのだが、それを綺麗な公式でまとめる。。。と、ここまでは、聞いていた。で、数値実験で確かめると、何と・・・。これは何か対称性とか何とかの構造がウラにある、ということだよなぁ。面白いが。。

セミナー2:オーダーパラメータ―空間の基本群が有限巡回群になっている場合のKT転移...おぉ凄い。。

金曜日

研究ノート(熱伝導気液転移)の検討。圧力ゆらぎの論文草稿(学生執筆)の検討。Macs でカテゴリー。。

カテゴリーは少し時間が離れると、頭から抜けてしまう。「馴れ」が定着しないんだよなぁ。対象と射を色々と変えて関係をみていくときに、混乱したり、見失ったりする。折角の機会なんだが、時間がなぁ。。Macs の定期時間の後で、(数学の)岸本さんから、ある問題の提案があった。うぬぬ、確かに、僕たちでは全く考えない設定だが。。帰宅途中で、いくつか頭でくってみた。なんか面白いことができそうな気もする。2週間で間に合うか。

夜、気になっていた、高校物理における音波の説明の解説を書いた。http://www.ton.scphys.kyoto-u.ac.jp/~sasa/sound.pdf これ、目的が二つあって、ひとつは、言葉に混乱があることを表にだすこと、ふたつめは、説明を自分なりにしたかったこと。特に、高校の教科書の説明とは違う絵の方がいいと思ったので、それを書きたかった。前者はできたが、後者は時間切れになった。変位の横波表示というのがあるが、あれは混乱のもとだと思う。変位は、矢印でかくのがいいと思った。また、変位という言葉をもう少し具体的なイメージでかけると持った。このあたりは間に合わなかった。ちなみに、僕が参考にしたのは、次女の高校物理の教科書だが、図を書いてあって、そこから色々なことを学ばないといけないが、超難解である。色々と絵を描いていると、あぁ、そうか高校のときにこうして理解したんだった、と思い出した。大学に入ったらいらないからなぁ。これは、時間をみて、完成させたいが、どうだろうかなぁ。

木曜日

あけましておめでとうございます。

って、11月25日から日記を書いてなかった。この間、阪大の集中講義などイベントがいくつかあった。研究もいくつかのテーマが進行しているが、どれもやや暗礁にのりあげている感じで中々辛い毎日である。

特に、熱伝導下の気液転移をミクロから考える研究は、11月25日の段階で、あと一歩まで追い込んでいた。線形応答理論を制御し、ゆらぎの理論を組み合わせて、現象論的考察を加えると何とぴったり変分方程式を解いたのと一致した。あとは、この現象論的考察をきちんと理論として位置づければいいだけ、、と思ったのだが、これが手ごわい。どうやっても「何か」を仮定しないといけない。式の上では、無限×0みたいな危ない寄与もでてきて、そのあたりもフラフラ。12月上旬頃の、拡張クラウジウスの素朴な拡張がありえると大丈夫、というのまで分かったが、それを示すことはできない。年末も年始もこのあと一歩の話で膨大な時間をくってしまった。大学が閉まっている数日の間にレポート用紙で30枚くらい使ったが、結果としてはダメだった。

ラファエルとやっている「マクロ性を徹底的に大事にする熱力学第2法則の定式化」も「よし、論文だ」ということになったのだが、これも最後の詰めのところでハングしてしまった。杉浦さん、横倉さんとのも「うーむ」状態で進展が遅くなってしまっている。

研究がすすんでいないのは、きっと日記を書いていないからじゃないか、、と思い始めていた。日記を書きながら、一日の研究を振り返って、そうか、こうすればいいかも、、とか思うこともよくあった。

というわけで、日記復活します。

土曜日

国際会議が仙台であった。イントロだけしっかり準備した。本文は詰め込み路線でいくと短時間の説明が難しいので、早々に講演を切り上げて、質問を待つ路線をした。質問がでなければ太田さんを指名するなどでつなぎ、出なかった質問は自分でする、という構成にした。何というか、半分は、手抜き工事だが、分野が広いのでめったくそつめても辛いだけだと。

準備したイントロはまぁ及第点だと思う。狙っていった(笑)もしっかりとれたし、PNASの実験も説明できたし。。ただ、Q and A は難しいなぁ。痛恨のエラーは、折角、学生さんが質問してくれたのに、その意図を理解しきれなかったことかな。あれは僕がその意図をきちんと組んで、しっかりと説明すべきだった。[講演後に来てくれて、分かった。]想定質問のひとつとして、その答えは何度も練習していたのに。。。あとは、太田さんが狙ったところから質問してくれたので、よかった。。

さて、会議中も、1週間前のノートの「現象論仮定」の部分を考えていた。それが正しいのかどうか。何らかの条件下で他の仮定から導けるのか。物理的描像はどうなっているのか。(このテーマの共同研究者の)中川さんも会議に参加していたので、絵と式をたくさんかいて、それらを具体的に検討した。その結果、かなり確信度が高まった。

前提にするのは、線形応答理論、および、熱力学変数のゆらぎの理論(ランダウ12章)である。色々な異常なことはあるのだが、とりあえず、線形ゆらぎ、ガウスゆらぎの範囲で考える。そして、気液共存特有の気液界面近くでの「界面の移動による潜熱」と他の物理量の相関を物理的に捉える。これらの結果で、先週の段階で「現象論的仮定」だったものは「導出」され、理論的にもすごくきれいになり、物理的描像も明晰になった。そして、いくつかの非自明なステップを組み合わせて、(前の論文で書いた)変分原理がミクロから「導出」される。仮定は、潜熱ゆらぎに関わる寄与の評価だけである。驚き以外の何ものでもない。仮に、どこかの仮定を間違っていたとしても、こんな理論を提出すること自体が個人的に未経験ゾーンにある。熱力学拡張関係では、Hatano-Sasa や KNST も非自明だけど、何というか、一発芸的であり、こういう膨大なステップの組み合わせはない。Sasa-Yokokura のネーターエントロピーも組み合わせは非自明だけど、それよりも(今の時点では)さらに壮大かもしれない。

12月中に細部をさらにつめて、1月から論文書きにして、3月までには公開かな。。((中川さんが変分原理の前から構築してきた)大域熱力学も論文として準備中で、その目次案も決めた。。)

金曜日

↓の話は、符号が間違っている、との連絡を月曜日にうけて、のたうった。すぐに2か所の間違いを見つけて、3箇所目を直してこれでいいと思った。しかし、次の日、3か所目の修正の余波が後ろの方にきて、もう1回符号がひっくり返る。。。と。おかしいなぁ、どこかでもう一回ミスっているに違いないと丁寧に見直したが、どうやら計算間違いではない。

そもそも物理としてふわふわした議論もあって、そのあたりの符号も怪しい。ともかく、形式、定義、仮定、計算を全て完全に分離し、論理はまっすぐにして計算もできるだけ単純にして、という作業で何とか現状の理解の整理は終了した。

あとひとつ、「現象論的な仮定」が曖昧になっている。それをのぞいては、もっとも明晰なレベルになった。で、この「曖昧な仮定」は計算ではないので、すぐには分からない。何というか、ゆらぎの議論の難しさをたっぷり味分かった1週間だった。それでも、おかげで、ゆらぎの理解は大いに深まった。少し時間をおいて、最後の砦の攻略は後日にする。

土曜日

11月8日、矛盾した結果しか得られない。「1=0になるんだ!」と家で叫んでいた。多分、形式はできているはず。1次転移からの線形応答という普通にやれば特異的になって計算できないのを、少なくとも、平衡系の数値実験をすれば、線形応答領域での物理量を全て決定できる形式にはなっている。ところが、次の難関として、時間相関の評価という問題があって、それをとある合理的だと思える現象論に従った計算をしてみたのだが、矛盾した結果にしかならない。どこが間違っているのか、よくわからない。

これまで徹底的に物理的なことや熱力学的なことは排してきた。できるだけ形式的に無味乾燥的に計算することに目標にしてきた。微視的な立場から絶対に正しい関係を積み上げていくという方針でいけるところまでいき、計算もできるだけ標準的な方法に沿う形にしたかった。しかしながら、1次転移点での時間相関の評価など、標準的な方法などそもそもなく、物理的なことをきちんと考えることにした。

11月9日の朝、8月下旬に中川さんが出していたアイデアを思い出していた。そのアイデアは熱伝導状態で使うには飛び過ぎているけれど、まさに今使うべきのような気がした。そこを起点にして、計算すべきことが一瞬で見えて、昼間の隙間の時間で何か公式らしきものまで出した。帰宅後、計算をすすめて、界面の位置に関するグラフを書いてみた。ふーん。。少し想像と違うところがあってがっくりきたが、念のため、変分原理を導く条件(スケーリング)を確かめてみた。そんなの成り立つわけないや、と思いながら、計算していくと、項がバシバシ消えて、まさにその等式がでてきた。え。。偶然か?あるいは計算間違いか。超高速計算モードが立ち上がって清書せずに、一気に殴り計算したので、間違っている可能性は高いと思っていた。

界面の位置の式を中川さんに送っておくと、11月10日の朝、変分原理を解いて得られたグラフとその式の重ね書きが送られてきた。おぉー、ぴったり一致している。昨夜のは、夢でなかったんだ。計算を見直して、気がかりな点を考えた。

さて、、と何が起こっているんだろうか。

土曜日

下でいいかもしれないと思ったアイデアは、毎日、少しづつノートにした。やっているのは、1次転移+線形応答の形式をきちんと書く、ということである。(標準的な方法で?)書き下すと、確定した量を使って表現できない、という事態になっていて、困っていた。やっと、その公式が書けたつもりである。非常に堅実で各種議論の出発点となる。例えば、熱伝導下気液界面温度をとある平衡状態の時間相関などを使って明示的に書き下すことができた。

ただし、この表現とNakagawa-Sasaにはだいぶ距離があり、さてさて、、ということだが、その一方で、界面温度が界面近傍の熱力学だけで決まるようなものではないことは明白のように見える。いずれにせよ、非自明な何かが起こっている、ということは間違いない。そこから奇跡的に簡単な量を使って変分原理に収束していくかどうか。。