Harada-Sasa

早川日記  にも肯定的にとりあげられている。これは、Langevin 系に関して、FDT violation と定常発熱を結びつける定理なので、今後、実験系も含め、いろいろな系に関して、(Langevin系にとどまることなく) 調べられるだろう。この結果が素晴らしいことは、全く異論がないし、おそらく、この研究成果に対する客観的な評価も高いと予想している。

しかし、僕はつねづね(日記でも)いっているように、誰もがわかる成果がでる前に、その研究の位置づけの判断こそがプロ研究者として大事だと思っている。Harada-Sasa に関していえば、まずは、原田さんの EPL に受理された論文をどうみるか。客観的には、なんの根拠もない予想にすぎない。理論的基盤もない。これに未来をみるかどうか、という問いを発したとき、18ヶ月前の段階で、それぞれの人がどう評価したのだろうか。多くの人は、「意味がわからん」という反応だったと思う。その時点での客観的評価としてはそれが妥当であるが、そのとき、「しかし、方向性は悪くないし、理論として何とかなる可能性もある。」といえるのかどうか。(この論文を受理したEPL はなかなか度量があるなぁ。)そういう判断に関して、自分の科学観をかけてすすむのだと僕は信じている。

ちなみに、Harada-Sasa にいたる技術的なブレークスルーは、昨夏のHayashi-Sasa にあるし、そのHayashi-Sasa のもっとも飛躍した部分は、林さんの発見にある。この発見も、客観的には、「だから、どうした?」という印象だったと思う。力をわける基準がわかったとしても、それをどう使うのかわからない。そりゃ、すぐにはわからないよ、世界で誰もやっていないのだから。幸いなことに、学会で、原田さんが自分の予想の理論化であがいていた話とHayashi-Sasaがくっつけれる、と直感できたので、秋にHarada-Hayashi-Sasa ができて、冬にHarada-Sasa につながった。

もっと長期にわたって格闘して、もっと難しいのは、いうまでもなく Sasa-Tasaki である。美しい大団円を迎えるのか、エピソードとして記録されるのみなのか、現時点では、もちろん、わからない。2年前のHayashi-Sasa など拠点はあるのだが、そこから大きくのばすことができない。