日曜日

久々に腰の具合がよくない。つられたのかおなかの具合もよくない。ねたままあれこれ考える。

わすれないうちに、整理をメモっておく。

ガラスの難しさに関して、論点を分離する必要があると思っている。ガラス以前に、まず、液体がむつかしい。液体論のゴールが何かは僕にはわからないし、液体論そのものに僕は強い興味がない。ただ、事実として、ミクロな相互作用を仮定したとき、液体のマクロの性質(状態方程式など)を導こうとする話には歴史と伝統があり、様々な計算技術などが開発されているものの、定量的な詳細をあわそうとすることを目指すのではてしない話になっている。

さて、構造ガラス転移とは、液体からガラスへの転移だと思われているわけで、未知のガラスを論じる前に、液体側については既知だとしないといけない。この既知というのは、上の意味で全く既知ではなく、PY だの HNC などの略記号であつかわれる何かを前提にしないといけない。つまり、たとえば、臨界現象のときの、高温側(無秩序相)が”比較的”人間の頭にやさしかったのに比べると、ガラス転移の高温側(無秩序相)は、不必要に技術的にならざるを得ない。

ところで、他方、古くから現象論的に議論されているように、(構造)ガラス転移は、多数の準安定状態を区別する壁がある温度を境にどどーんをそびえたつようになる転移である、という描像がある。これはなんとなく一般的な機構として理解したくなる話である。そして、最近の数値実験の結果をみていても、状況証拠的には「ありそうな気配」ではある。統計力学の研究者は、こちら側から筋をとおしたい研究者が多いだろう。理論として、作業仮説ながら、ここを切り込んだのが、Monnasan, Mezard-Parisi である。

しかし、液体側での技術的な難しさが同居しているため、理論が熟成していく気配がない。ここで、Dotsenko らの論文である。液体特有の難しさをたくみにさける人工的なモデルを提案し、Mezard-Parisi 路線の計算を具体的にしてみせた。このモデルのうまみはつぎのような点にある。

まず、液体論が難しいのは、排除体積効果が大きく(本質的に)きくからである。この効果を計算するには、自由エネルギーをまともに相手にするしかない。そこで、排除体積効果が大きくでる状況を封じて、かつ、準安定状態がぼこぼこでそうな粒子モデルを考えればよい。彼らのモデルはそういう風になっている。(著者はこのうまみをいちいち説明しているわけではない。僕の主観的理解である。)


実在するガラスとの対応は考えにくいが、まずは、液体論特有の難しさを分離し、相空間の構造からの理解(静的)と非エルゴード転移(動的)からの理解の関係をおさえるのが、今、大事なことだと判断する。ガラス特有の現象の理解に質的な一歩を加えるのは、ここを突破口にするしかない。(考え方としては、非平衡定常系の研究と同じ路線である。既存の理論で原理的には理解できるが煩雑な要因となりうるものは徹底的にそぎおとす。)


くしくも2月以来、岩田さんとすすめてきた話は、液体論を参照せずに、非エルゴード転移を議論するひとつの方針の提案だと位置づけれる。(現象論的な仮定をすれば、液体論を参照した話へのスイッチはいつでもできるが。)それならいっそ、Dotsenkoらのモデルと同じクラスのをやってしまおう、、とハンドルをきったのが先日である。形式の整備はかなりおわってきて、具体的にみせる段階だから、モデルを選ばないといけないからである。

モデルはきわめて簡単なのだが、ちょっとこっているところがあって、そこが僕らが考えている解析の技術的部分とどうも相性が悪い。昨日、相性の悪さを明示的に理解して、停滞しているのである。(計算できなけりゃ、形式そのものに意味がない。)技術的な問題だから、なんとかなるような気もするが、知恵をださないといけないのかもしれない。

今日は今日のアイデアがあるにはあるが、ちょっと懲りすぎているかなぁ。