金曜日

もう何年も続けているが、木曜日はホテルに泊まっている。朝早くおきる必要がないのに、今朝も6時過ぎに目が覚めた。もう、今年度はこれで順応することにしよう。仕事の進み具合はいまいちだったかな。やはりproceedings が絡むとだめだな。Iwata-Sasa 論文 は投稿できる状態まで完成させたが、この時点で英文校正にだす。(英文校正は、安くて早い業者Aと高くて遅い(が自分の勉強になる)グレンの2本を量や事情に応じてわけている。業者の添削は、実際はミスチェック程度にしかならないので、実質は割り高感がある。)今回はレターサイズなのでグレンにだす。4月中投稿はたぶんできるだろう。

さて、この論文、非エルゴード転移に関する新機軸をうちだしている。というと格好はいいが、きわめて素朴に時間相関関数の振る舞いを考えただけである。既存の方法にとらわれず素直にすすめば、うまいこと力学系縮約路線にのった。春の学会で岩田さんが話したように、この路線はもうちょっと進化させて、素朴な解析を古典解とする経路積分表示をつくって揺らぎの解析も視野にはいってきたが、それはもうちょっとつめないとわからない。

それはともかく、「実際に非エルゴード転移があるのか?」といわれると実はよくわからない。数値実験や実験室実験では明らかに転移らしいものはみえる。しかし、それがクロスオーバーである可能性は否定できない。現象論的にクロスオーバーの可能性を議論している論文をみても、もともと微妙な問題だから、おおらかな議論ではどのような結論でもだせるのでなんだかよくわからない。厳密解析の方はゆるやかにすすんでいて、どうもクロスオーバーの可能性が強そうな気もするが、まだ勉強していない。近いうちに是非とも勉強したい。

クロスオーバーと真の特異性の判別するひとつの手段は、連続パラメータを変化させて、明らかなクロスオーバーと特異性なしで接続できるかどうかをみることである。たとえば、温度をさげることによってある長さスケールが大きくなって(固定した)系のサイズと拮抗しはじめることによって生じる特異性は、あきらかにクロスオーバーである。この場合、もし、論点が、特異性がみかけ(クロスオーバー)か真か、という点にあるなら、議論の余地はない。他方、論点が(クロスオーバーであってもみかけの)特異性の起源の理解にあるなら、真の特異性かどうかはどうでもいい問題になる。どこに論点があるのかを理解しないままの議論は一般に不毛になる。

少し脱線したが、非エルゴード転移について、クロスオーバーかどうかを数値実験的に決めれる方法についてもぼちぼち考えている。大槻君が最近やっていることを系統的に発展させれば、そっち方向もできるかもしれない。 しかし、ま、それとは独立に Iwata-Sasa 路線はできる限り格好良く発展させるつもりではいる。(これはこれで、理論物理の技巧を意外な組み合わせで使う雰囲気が面白い。)