日曜日

この1週間で、岩田さんと(p-spin glass の)MCT方程式を解いていた。p-spin glass でMCT 方程式が導出されてその振舞いが議論されたのが15年前で、その解析の本質は20年前から25年前に終わっている。何でそんな古い問題をやっているのか、、いや、そもそも「解く」とは何事か..。

勿論、厳密解があるわけではない。転移点近傍の解を出そうとしているのだが、もちろん、それでも解を明示的に書くのは不可能だ。じゃ、何をやっているのかというと、(時間に関して一様な)近似解を構成する手続きを明示的にしている。まだ終わっていないが、なんとか見通しはたってきた。たぶんできそうだ、、という感触はつかんできた。(あと一歩に見えるが、ゴールするまではわからない。)

専門用語を使うと、MCT 方程式に"matched asymptptic expansion" を適用することになる。この展開は100年くらい前のプランドルの境界層の理論で僕は初めてしったが、特異摂動の定番のひとつでもある。もし、無事に勘違いのないまま定式化が終了すると、僕たちにとっては極めて有意義なことが増える。

何と、"outer solution" がサドル=ノード分岐する。ただし、初等型でないため普遍形は k-core の場合と違ってくる。もっと具体的にいうと、典型的サドルノード分岐を引き起こすポテンシャルの変化は生じるのだけど、動力学に「非線形な記憶をもった散逸」が関わってくる。k-core の場合だと、この記憶が(偶然?)ないので、初等的サドル=ノードにおちたのだった。

既に定性的振舞いが理解しつくされているMCT equation をそんなに精度をあげて考えるのはおたくの極みにみえるが、これはもちろん臨界ゆらぎを考えたいからである。サドルからの脱出時刻のゆらぎで動的相関をとらえようとするのが僕たちの行き方だから、MCT type でもそのアプローチの有効性をみせたい。そのための第一歩は、サドル=ノードを同定することだった。僕たちのアプローチでp-spin glass の動的相関を記述するまでは早くてもあと半年はかかるだろうから、それはゆっくりやるにしても、ともかくサドル=ノードの証拠を完全にすることは現時点で極めて大事なので、ついつい紙を睨んだりしていた。[もちろん、この休日でやるべき正規の仕事の8割以上は終えたつもり。]