金曜日

板倉さんのセミナー(講義):"From QCD to Statistical mechanics in and out of equilibrium" という題名でお願いした特別セミナーである。

僕の第一の動機は、「最近の高エネルギー実験で、どういう背景で、何が測られ、どう考えられているのか、ということについて素朴な基礎知識を得ること」だった。QCDは70年代前半までの知識しかなく、そこから先は耳学問すらなかったので、短い話を聞いたり雑誌で紹介を見てもピンときてなかった。特に、「流体」や「非平衡」という言葉がかなりよく出てくるのに、そもそもの前提がわかわないのが気持ち悪かった。それを解消したかった。

第2の動機は、カラーグラスやゆらぐ反応拡散系などが板倉さんの研究対象であり、名前だけだと僕の対象と非常に近い。(後者の関係で、連名論文を書く機会があった。)そこで、それらの背景も理解したかった。そういうわけで、この二つの動機に沿って、第一部と第2部が用意されていた。[おそろしいことに、題名から2部構成の大枠まで、僕が提案させてもらった。]

結局、5時間を超えて講義室に閉じ込めてしまった。(強引にコーヒーを飲みにいけばよかったのだけれど、つい話をし始めて...タイミングを逸してしまい、失礼なことをしてしまった。)そして、第一部だけで終わった。(しかも、最後の非可換渦は走って。)

極めて有意義だった。全体像を把握できただけでなく、局所的にかなりピントがあった話題があった。特に、特異な摂動論の問題や流体の問題は、自分たちが普段やっていることとも関わっていて、具体的な問題としても確実に意識に残っているし、頭で研究プランを考えはじめてメールを送ってみた。

その中でも、最近よく見る「A:=粘性係数/エントロピー」についての役割が腑に落ちたのは非常に嬉しい。Aを無次元として扱うのが業界標準らしく、そりゃ光速いれれば無次元化できるけれど、「物理としての位置づけがさっぱり分からない」、と時々いっていた。Aを縦軸に使って整理するのが意味がある、ということは、輸送と熱力学が絡んでいるということで、まるでSST の世界じゃないか。。とか。講義中にもそういうことで騒いでいた。

講義後に、学生のひろのさんが、こういう面白い考え方がありますよーと教えてくれた。ほう、それは極めて明快だ。... で、その後で自分の部屋に戻って、「待てよ、そこまで明快なら、それはランダウにも載っているべき事柄じゃないか!」と気になってきて、ランダウを取り出す。まさにそのことが書かれているではないか。うぬぬぬ。一応、僕は、読んだというか見たことになってるんだなぁ。。しかし、それを見たときは、頭がまわっていなかったらしい。何か悔しい。[喜んだり、悔しがったり、単純だ。] でも、これからは、A という物理量がでるたびに、「ふふふ、それはだなぁ。。」とほくそ笑むのだろう。ほくそ笑むだけだと何なので、ついでに何か考えようか。