金曜日

水曜日、ノートに間違い(計算ミス)があることが中川さんに指摘される。間違いを直ちに理解して考え直す。午後、講義で、その後は全部使うが、基本的にそのあたりの計算が粗すぎで間違いだらけになっていた。(ちょっと変な思い込みがあって、特異的な部分が関わらないと勘違いしていたことに起因していた。)夜、丁寧に計算しなおす。修復できたと思って、ノートを書いていたが、結局うまくいかない。厳しい。

木曜日、新幹線の中で、整理整頓をする。ほぼ整理が終わって、水戸へ。中川さんも別ルートを辿って本質的には同じところまでいっていたが、ともかく、状況を整理するため、諸量の定義や仮定や計算を丁寧に黒板で確認していく。とある命題「A=B」でAもBも単項式が成立すれば、中川さんの変分原理も成り立つだろう、ということころまで確認できた。冷静に言えば、この「A=B」は論理的に帰結しうるものでないんじゃないか、いや、まだ使ってない条件を使ってこうすれば、という議論をするが、解決せず。ただ、何となく解決するような気がして、夜もずっと考える。が、疲れていつもよりずっと早く寝た。

金曜日、いつもより早く起きて、考え始めた。しばらく、昨夜の続きのような方針であれこれ書いていたが、堂々巡りっぽい。と、そのとき、あ?この条件が使えるかも、と転回すると、いけた気がする。大学で、黒板に丁寧に書いて、中川さんに説明して、いけてるかな、ということで、ついでにテフノートも一気に書く。

午後、筑波大学で、斎藤さんに説明する。界面熱力学の立場から、思考実験の立場から、そして、できたてほやほやの定理について、もう、これ以上ないくらいに楽しく説明できた。そして、極めて重要なコメントや宿題を頂いて、出張任務終了。

今までのパタンからすると、また間違いがあるかもしれないので、慎重に検討は続けるが、このまま間違いがなければ、「著者たちもびっくり」の命題が示されたことになる。中川さんが予想していたことを示すので、中川さんがびっくりする必要はないのだが、それが仮に正しいとしても、示せるとは思えなかった。実験からサポートを得るとか、ミクロからパスを通すとか、そういうのはありえても、目前にある式を直接示すのは、少なくとも2週間前の僕には絶望的に思えた。(何度かチャレンジしたが遙か手前でブロックされるから。)

日曜日に「相当いいところまで、というか、ほぼ全部」実は中川さんが既に示していることをやっと理解して、計算を簡単に、かつ、論旨をまっすぐにしたノートができたと思っていた。ここまで簡単化した後で、間違いがあってパスが通らないと、逆に、非常にピンチになる。今までは、「予想の提案」で済んでいたが、ほぼ計算できて予想が成り立ちそうもないとそもそも論文を公開するのだって難しいではないか。そこからの逆転というか、綺麗な形で着地できたので、本当に良かった。

こういうのはたびたびあるわけではない。この1週間は個人的にも異常なほどの集中力を発揮できたと思う。先週の金、土での一気の計算。やばくなってからの水、木、金での盛り返し。特に、この水、木、金は凄かった、と自分でも思う。こういう瞬間を経験できているうちは、まだ研究者として続けれるのかもしれない。そういう意味でもよかった。それはいつか終わりがくるのだろうけど。