水曜日

朝、いつもと同じように家をでて、夜、いつもと同じくらいに帰ってくる。が、大学にいったのではなく、京都への日帰り出張だった。総武線(グリーン)では快適に仕事をできるが、新幹線では仕事しにくい。速度をもう少し落としてくれないかなぁ。途中から頭だけでできることに切り替えた。

用件が終わった後でさがわさんのセミナーに間に合ったので駆けつけた。10年近くになるのかな、生体内で「自律的操作」やら「フィードバック」やらの言葉で書かれるような現象が見えることに対して、物理学として何をやればいいのか時間をとって考えていた。問題その1は、「ともかく矛盾のない(メソスケールな)模型をつくれ」;ただし、粗視化しすぎて「言葉」を力学系で書くのは簡単なので、それはなし。[その類は見せるにはいいけれど、深くはならないと思っている。]模型はポテンシャルやエントロピーで縛られる範囲で考えないといけない。これだけでも中々難問である。センスのない僕はパス。関本さんがずっとこの問題に対していくつかの結果を蓄積している。問題その2は、そもそもヘテロな分子集団から、「操作」が関わるような現象が浮かび上がるための条件は何か?いくつかのグループにわかれてそこでメソ模型で描かれるような振る舞いが見えているはずだけど、そこの階層移行はまったく謎である。僕たちが今までに知っている階層移行とは違うタイプだと思うけれど、それを一般的にとらえたい。これも相当に難問であり、手つかず。今日のさがわさんのセミナーを聞いていて、そういう系のミクロとマクロを再考したくなった。

もうひとつ今の頭の大部分を占めていて、今日の出張業務とも関係するのは、「固体の流れ」である。本当にどうなっているのか見たくて見たくて仕方ないので、多分、次の休日には時間をとって数値実験をするだろう。ミクロからは適切な模型の設定と適切な状況設定と適切な測定量を考えることに集中する。これをみながら、マクロからは実際の実験で何をどうすればいいか考える。で、そのミクロな様子に依存するけれど、きっとこれもメソがあるように思える。機構をキャッチーにいうと、「対称性が破れてGoldstone mode がでてゆらぎの寿命∞と思いきや、instanton がしゃしゃりでてその寿命が有限になっちゃって、対称性が回復してhydrodynamics が復活」みたいな話なので、instanton を捕まえないことには理論化はできない。これを理論で書くのは、今のところ、メソでしかできない。(それでも難しい。)これが問題1。ミクロからそれを出せれば非常に面白いが、これが問題2。

つまり、ふたつの対象の位置づけは同じで、マクロに現象として面白く、メソの機構の実現も簡単でなく、ミクロからは全く非自明で何もみえない -- 。今日は、僕が好きな問題たちがたまたまふたつ重なって話ができたので、気分がよろしい。