木曜日

論文を見て、"The second law of thermodynamics for Pure classical states" を考える。

量子系に対して非常に綺麗な命題が得られているのにわざわざ古典版を考えようとする動機を不思議に思うかもしれない。これは、第2法則のぎりぎりのところで「量子」がどの程度不可欠なのかどうか、という問題をずっと気にかかっているからである。

アンサンブル描像ではなくて、個々の力学状態の時間変化を考える。(量子系なら状態ベクトルのユニタリー変化;古典系なら相空間におけるハミルトン方程式の解軌道)力学状態の初期条件を用意して、ある時間を待って「(サイクル)操作」し、この操作後にエネルギーがどうなるのを見る。系の詳細や操作の詳細など色々あるが、上記論文の条件(1)はかしておいて、あとは任意にする。(統計力学の基本的な設定。)任意に選んで固定。

「初期条件」と「待ち時間」が残るパラメータになる。「待ち時間」は上記論文と同じように、一様にサンプルする。初期条件はエネルギーシェルの中から一様にサンプルする。十分長い待ち時間の一様なサンプリングは、その初期条件についてのエルゴード測度に関するサンプリングと同じであり、エネルギーシェルの中から一様にサンプルしたとき、典型的には、そのエルゴード測度はマイクロカノ二カルになる。自由度が十分に大きいとき、マイクロカノニカルによる典型的結果とエネルギー面に囲まれた領域の一様測度(拡張マイクロかのにかる)による典型的結果は同じであろう。後者の場合は、サイクル操作でエネルギーが大きくることを示せる。これは古典の場合に期待している標準的なシナリオである。

これを踏まえて上記論文を見ると、

0)熱力学極限でのマイクロカノニカルと拡張マイクロカノ二カルの等価性を使わずに第2法則を示している。

1)初期条件の集合は明確に決められており、その範囲にあるなら、例外的な初期条件などはない。

という違いがある。1)については、ノイマン論文の解説で議論されたように、量子と古典の大きな(本質的な)差のように見える。僕はまだ未消化だが、おそらく重要なことが背後にあるように感じる。

今回、論文をよんで気になったのは、1)ではなくて、よりテクニカルな 0)である。つまり、エネルギーの薄い幅に対する第2法則の証明として(レナード的なものでない)新しいタイプになっていて、かつ、簡単なことしか使っていないので、ぱっと見た瞬間、「あれ、それなら古典でもいけるんじゃない?」と思った。思っただけで、今週は全く研究の時間がとれていないので、手を動かしていない。誰か、僕の見当違いを正すか、古典で同じ論法が使えることを見せるかしませんか?