金曜日

パリでの滞在型研究会なので、基本は「フランス英語」である。きれいな英語を喋る人もいるし、かなりなまりが激しい人もいる。いずれにせよ、ヨーロッパ人はそれぞれの国なまりの英語になれているようだが、日本英語には基本的になれていない。今回、日本人の発表者は僕だけだし[後記:間違えた。谷口さんが来週に発表する。]、フォーマルに質問している日本人参加者*1も僕だけなので[後記:間違えた。先週、竹内君が質問していた。すまん、忘れていた。]、日本人英語はひとりしかいない。僕は英語は得意ではないので、苦労しながらしゃべっている。「皆さん、はやく僕の英語になれてください!」という要望も半分。[いずれにせよ、英語はちゃんと喋りたい。ま、しかし、語学は一日二日でどうしようもないので、訓練したければ年オーダーで修業しないといけない。(少し考えているが、実現するかどうかわからない。)] 

昨日から、フランスなまりが強い英語で質問する聴衆がふえて、この人から質問されたから聞き取りに自信がないなぁ、、と思っていた。質問は素朴なのだけど、そんなに鋭い感じはない。でも、講演者が一生懸命応対しているなぁ、、くらいにみていた。(この人のフランス英語に)馴れるために、今日の午後の休憩時間に挨拶してなれておこうかな、、と思っていた。で、朝の講義の休憩時間にぼーと座っていたら、その人が突然僕の眼の前にやってきて、「お前はささか?」と聞いてくる。(よし、この機会におしゃべりして慣れよう、、というのと、僕の名前を知っているのはなんで...)というのが同時に頭に浮かんだ。で、次の言葉でこけた。「わたしは、ベルナード、デリダです。」

変な話だが、頭の緊張感を3倍あげて、喋りはじめる。いかん、(下手くそ英語の)早口になっている。。で、ルエルの最後の講義の後半がはじまった。講義の最後だから、それらしい質問をいくつか用意していたのだけど、予定変更。ルエルの講義がおわったあとの10分を使って、自分の話をデリダさんにしよう、、と、頭をそっちに使う。で、講義後、先にあったアポを横取りして、10分もらう。たたたーと話をする。"OK, it's fine" なんてのは全然だめで、目つきがかわらないと話にならない。で、目つきがかわったのは、やはり、揺らぐフロントの話だった。というので、来週、その話をさらにするアポを(なかば強引に)いれさせてもらった。さて、週末に準備しないといけない。(今は、頭からは完全にぬけている。)

さて、昨日と今日の午後は、KPZ 特集だった。4つのセミナーがあって、うちふたつは同じ人。その2時間以上つかった人は、内容は10分に圧縮できて、かつ、中身は現段階では限りなくない。(PRL に受理されていたが、査読者が素人だったとしか思えない。素朴だが鍵となる質問をいくつかしたが、少し考え込んで「それは大事ではない」といって逃げていた。この人、自分のやっている計算の物理をほとんど理解してないなぁ、、と僕は判断した。)あとのふたつは、Spohn による厳密解析ラッシュのreview と Canet によるnon-perturbative RG の話。Spohn の話の内容は、(さすがに)何度となく聞いたことがあるが、話の構成はうまかった。Canet の話は、もろに聞きたかったこと*2で、中身をかなり理解した。(研究室でも軽く文献紹介をしたことがあった。)たしかに、今のところよい感じでいっている気がする。僕は自分が理解したいレベルの素朴なことしか聞けないが、こういうのは、田崎さんクラスの人が正しくて深いことをちゃんと聞いて欲しかった。

あ、Spohnさんとも来週にアポをいれてしまった。これはfocus meeting で喋ることの簡略版を喋る。(focus meeting のときは帰っているから。)この週末は、focus meeting の準備をはじめるつもりだったので、新しい準備はいらない...かな。(簡略版の準備もいるかな..?)

コーヒーを飲んでいるときに、目つきのいい学生や元気な学生をみつけては、こちらから喋りかけている。今日の学生。僕の「何を研究しているの?」という質問に対して、「Hatano-Sasa です。」「......」 かわいそうに、30分くらい僕に拘束されることになってしまった。 (ドイツの学生で、日本でいうD1 に相当する。ドイツでは、Udo (Seifeld)が宣伝してくれていて、彼から話を聞いた、、といっていた。)

*1:緒方さんと松井さんが今週参加している。緒方さんはfocus meeting までいらっしゃるようだ。緒方さんには7年前の集中講義で質問をひとつ受けたことがある。中々鋭い質問だったので覚えていた。7年ぶりに会ったのがパリとはやっぱおかしいな。同じ(広い意味の)非平衡をやっているのに。

*2:実は、限りなく近い問題をM2のときにやっていた。ただ、大事なカギをひとつぬかしていた。preprint をみた瞬間にそれはわかったが、今日話の筋をきいて、もし、その鍵さえもっていたら、同じところまでM2のときにいけただろうなぁ、、と思い出していた。MCTを含んだ計算になっていることも、今日、明示的にコメントしていたが、それもM2 のときにわかっていたのだがなぁ...。負け惜しみだな。でも、そういうもんだ。そしてそのカギ自体は彼女たちがみつけたのでなくて90年代の別のグループによる。