金曜日

早朝、昨日のノートのバグをみつけ修正する。これで間違いないように思うが、結果に納得しきれない。

まず、SST-entropy の局所平衡からの補正の一般的な公式がもとまった(はず)。これは、格子模型やコロイドずり系ならシャノンになるので、そのひとつの公式を与えることになる。今のところ、この公式だけからはたいした知見はとれない。符号はわかる。どうも状況に依存しないようだし、多くの人が直感的に指摘してきたとおりの符号である。中身をみるのは具体的なモデルで検討しないといけない。

しかし、まだミスっている可能性が高い。このSST エントロピーの式は温度場を決める変分原理を具体的にみるために求めたのだが、その変分原理の結果がどうもおかしい。古来より、温度場を決める物性定数は熱伝導率である。ところが、でてきた変分方程式によると、熱伝導率と似ているが厳密には違う初登場の物性が温度場を決めている。両者が整合する可能性はあるのだろうか。すぐに思いつく反例があるのだが、、。うーん。ミクロから議論しているのだから、ここをえいやぁ、、とやってしまったらダメだろうしなぁ。これまでの計算を再度チェックして、あっていたら丁寧に整合性を検討してみようか。もし、整合していたら少しびっくりだもんな。(以上、朝の7時頃、カプセルの中で書く。)

(ここから夜の8時頃電車の中で書く。)今日のところは、びっくりだった。以下、30分で書いた殴りがき。

非平衡系において温度はアプリオリには定義されていない。ただし、環境(熱浴)は平衡系だと想定するので、環境の温度は定義されている。さて、このとき、系の温度について考えよう。

最初に注意すべきは、(平衡系のときの温度のように)”測定量”としての絶対的な意味をもつ温度概念はない。したがって、いかなる定義をとろうと勝手である。ここで考えたいのは、局所温度、つまり、空間座標に依存する温度だが、いかなる定義をとっても構わない、という立場にたつ。正しい局所温度とは何か? ... なというのは、そもそもの問いが間違っている。便利は局所温度は何か?というのはあるだろう。つまり、局所温度とは座標系のような役割である。

エネルギー的量は測定可能量である。これは定義の問題ではない。この定義について議論したいならニュートン以来の確立した物理学の範囲で考えればいいので、ここでは問わない。ところで、測定可能量は、局所温度の定義に依存してはならない。これはあたりまえだ。このあたりまえのことを数式で書くことが局所温度を考える出発点になる。

熱伝導の線形応答理論の場合、環境の温度を使った線形応答理論は一点の曇りがない。しかし、先日のソーレ力のような場合、やはり物理過程を局所的に考えたい。そうすると、局所温度を使った線形応答理論を使えばいい。これは自然な考えだし、実際、公式そのものは確立している。ところで、そのときの局所温度とは何か?局所平衡分布にもとづいて云々、、というのが、標準的な言い方である。でもまてよ、局所平衡分布のパラメータである局所温度はどうやってきめるのか、、正確にいえばどうなるだろう。いや、そもそも、他の局所温度を使ったら、線形応答の公式は別の値をはじいてしまうではないか。疑問があふれかえる。

第一の問題は、例えば、

局所平衡分布にもとづくエネルギー密度の平均が真の平均と等しい  --- (*)

ように局所温度を定義するのが自然だと思える。実際そうすると、熱力学関係式が使えて便利だ。でも線形応答の公式のどこにも (*) を使っていない。これは第2の問題を関係している。他の局所温度を使ったら公式が変わるのでそもそも「測定量が局所温度の選び方に依存してはいけない」をみたしていない。

この問題を解決するには、少なくとも2次のオーダーまで考えないといけないことに気がつく。このオーダーまで考えてはじめて、「座標系の選択に依存しない測定量」という要請を満たす記述ができる。よし、苦労して、全ての物理量をこういう座標系の選択に依存しない測定量でかけたとしよう。

しかし、面倒だな。便利は局所温度が欲しい。 (*) がいい! でも、まてよ、真の平均とか形式的にはかけるけれど、モデルが与えられたときには途方もないではないか。2次までの範囲だから、ゴリゴリ計算すれば、計算するのは不可能ではないが、おそろしく大変だ。こういうとき、(*)を満たす温度を平衡状態の物性をつかった原理一発でわかれば大変便利だ。これが、今日、確立した変分原理である。SST-entropy が大活躍する。実際、測定可能量である(!)SST-entropy が、局所温度の定義に依存しない、ということを数式でかいて、(*) を要請すると変分原理がでる。

このようにして決まった温度場は、マクロ系の場合、エネルギー連続の式できまる温度場と同じか? 同じだ、、。しかし、理屈が違う。エネルギーの連続の式は、測定量に関する式なので、これ自体は座標系をきめることができない。だから、(*) のように局所温度をきめたあとで、いつも成り立つエネルギーの連続の式を書いてやると、(マクロ極限での)温度をきめることができる、、ということである。この論理で一般に補正がつくかつかないかは、近日中に計算する。均一マクロ極限で補正がないことは今日すんだが、補正がつくのでないか。例えば、ヘテロ接合系だと局所温度にギャップがでることはよく知られている。こういうのも全て第一原理的に説明できないといけない。(*) を自動的に出す変分原理の解は温度ギャップも完璧に説明できるのである。

そうそう、ソーレの保存力性とオンサーガー性は座標系の違いとして理解できる。田崎座標をとれば保存力がみえるし、局所平衡座標をとればオンサーガー性がみえる。田崎座標にもとづいてゴリゴリ計算して、ミラクルがおこるのは、直交座標で計算してミラクルがおこるのと同じ。

あ、、ついでに、エントロピー生成最小原理というのがある。これは、エントロピー生成を最小になるようにカレントをきめるもので、、関係があるかのようにみえるが、少なくとも当面は無関係だといっていい。

疲れたので、ここまで。ノートは近日中に書く。すげぇ、面白い、と自分では思う。