火曜日

ランダムグラフ。n 個のノードにたいしてm本のリンクをランダムに選ぶ。これが初期条件。外側から各々のノードにランダムにアタックがかかり、もしノードからk-1本以下のリンクしかでてなかったら、そのノードは死んでしまう。これだけの時間発展である。たくさんのリンクがあれば頑丈だからアタックに対してびくともしないが、リンクがすくないと時間発展するうちにすべてのノードが死んでしまう。このとき、すべてのノードが死ぬところから有限の割合のノードが残る転移が k-core percolation とよばれる。(n/m 固定で、n,m 無限)

さて、上で書いた確率的動力学はイメージが大変わかりやすい。手がたくさんあるとアタックされて頑丈だが、手がすくないとリンクが切れてしまうのは、jamming 転移と大変似ている。実際、k-core percolation の近くで上の動力学の数値実験をしてみると、滞在時間のぷらとー的なのびが生じるだけでなく、動的相関が発散していることもすぐに確かめることができる。

今日、岩田さんが昨日計算した結果に朝の電車のアイテムをひとついれると、このjamming 転移が、marginal saddle のまわりの揺らぎで記述できるシナリオに大きく近づいた。熱力学極限での決定論的ふるまいは、少数変数の微分方程式で記述することができて、その方程式の解析をすると、見事に転移点近くでマージナルサドルが関与しているのが合理的になってきた。(必要な諸々は全て数学者が用意してくれているので、それをふるにつかっているので、盗人的感覚だが..。)

本当かどうかは時間をかけてひとつづつつぶしていかないといけない。本当なら、動的相関の発散の指数まで全て計算できる。それのみならず、計算できる以上の意義がある。

統計モデルが与えられたときのjamming 転移を理論的に攻略するさい、個別モデルの解析を超えてひろがりをもっているのはMCTである。このアプローチが統計業界でも受け入れられているのは、p-spin glass ではergodicity breaking に関して(理論物理の意味で)exactな結果を出すからだと思う。Culiandolo-Kurchan のFDR violationなどでその事実がひろくしられた。動的相関に関しては、Franz-Parisi がこのモデルで最初に議論した。Biroli-Bouchaud はこれを diagramatic な立場でかくことで一般化し、宮崎さんらは伝統的MCT の範囲で動的相関を記述することに成功した。まさに、研究の発展の王道である。

これはこれでいいとして、絶対に別の道が必要である。(例えば、activation event をMCT の延長で理論的に完全に記述するのは不可能だと思っている。)僕たちは、色々な偶然が重なって、分岐シナリオを提案している。理論的には面白い側面はあるものの、多くの動的相関そのものとは無関係だ、、とは常につきまとう恐怖だった。最初のJSTAT のサドル接続分岐シナリオは、近似の程度に依存する、という宮崎さんの指摘は正しい。しかし、そういう立場からみて徹底分類をはじめる路線はありえるのが僕たちの立場だ。とはいっても、例題がないとこまる。MCT における p-spin glass に相当する例題がいる。。。こういうときに、ジュリオの絶妙のタイミングでの示唆があって、ランダムグラフのk-core percolation をみたわけである。(彼らは、ランダムグラフの FA モデルをやっていたから、当然、その振る舞いをよく理解していたのだろう。)

上記の問題は単純かつ非自明である。それが、力学系でいうmarginal saddle 近傍の揺らぎの解析でかけるなら、完全に新しいアプローチを獲得することになる。(細かいことだが、ノイズの性質が今までやっていたのと違う。multiplicative なんだよな。だから解析も変更しないといけない。)このモデルの解析を超えて、そこから派生する様々な問題につながっていく可能性を獲得するのは大変気持ちがいい。もちろん、浮かれてばかりではいけなくて、ひとつづつ論点をつぶさないといけない。