火曜日

非平衡Langevin系における時間平均速度のきゅむらんと母関数: G(h)と書くと、h の1次が平均速度、2次が拡散係数、3次が... という風に全てのゆらぎの統計を含む。それをルジャんドル変換をしたらlarge deviation のrate function I(J)になる。まれなゆらぎの統計を議論するときは、平均速度や拡散だけでなく、G(h)やI(J)が特徴づけになっているが、理論的な計算は面倒だし、実験で測るのは大変だし、だいたい意味があるかどうかよくわからない。

しかしだなぁ、平衡系で磁化のゆらぎをみて、平均磁化、磁化のゆらぎ(=帯磁率)、skewness.... をまとめたきゅむらんと母関数は、熱力学関数で書けている。これは本来驚くべきことで、マクロ平均の性質の簡潔な記述から凝縮された関数がゆらぎまでも見ているのは全く自明ではない。(統計力学を認めたら自明なのはそうだが、正しくは、統計力学はそういう風に構成された。)

だから、非平衡系でもともかくきゅむらんと母関数を求めて、どういう可能性があるのかを見当するのは大事だと思っていた。この10年で色々な蓄積はあるのだが、僕的には、まず1粒子1次元Langevin できちんと問題設定して、実験のプロトコルも意識しながら議論できるようにしたかった。しかし、1粒子1次元系でも途方もない。拡散係数の計算でもおたおたしたのは数年前だ。3次、4次とかの計算は1年前でもできなかった。根本君の計算が肯定的な結果になったことをうけて、ここにきての急展開が始まった。

朝の電車で根本君のノートを見て、G(h)を変分原理で書くことができるのは分かった。帰りの電車で少し書き直しを始めて、帰宅後さらに綺麗な形になった。いわゆる「線形非平衡熱力学」の変分原理と同じ雰囲気を醸し出している*1が、Langevin のG(h)にとして「数学の結果」として出てきたのは想像を絶する。(手法的には裏技を使っているが、説明したら納得はされる。)これは何だろう。極めてそそる。危ないのを覚悟しながら、物理的内実を探しにいこうか。

*1:変分原理というと形式的でつまらないものという印象を持ってしまうし、そういう研究は多い。しかし、この表現は実用的にも極めて優れていて、今まで手が出なかったところにアクセスできる。例えば、拡散係数の計算にしても今までのどの手法よりも素早く結果に到達できるし、高次キュムラントのすみやかな計算も可能だし、おそらくG(h)を厳密に見せれる例もあるだろう。