金曜日

朝は諸事。昼前から論文大改訂作業。1昨日の構成案に沿って手入れをする。17:00までに終える!とやっていてちょうどちょい前に終わる。ベターにはなっているのか?

その後、5月模型について、サイズを変えた計算を土曜日曜にとばしておこう、とシェルスクリプトを書いて流す。面倒なのでテストなし。バグっていたら月曜日にバグだとわかる。バグってなかったら月曜日にサイズ依存性第一弾もわかるだろう。

この週末にすべきことを整理したら、昔を思い出させてくれるメールがきた。1988年ソールオリンピックで鈴木大地が金メダルをとった日、一乗寺の中華な店で夕食をとった。ちょっと奮発して紹興酒を飲んで、(月額1万円の)下宿先に帰って、模型の詳細をいじっていた。

やっていたのは、"KS方程式の縮約" と称して、(時空カオスを示す)PDEの振る舞いを真似する系をどこまで簡約化できるか、という問題だった。当時、CMLという簡単な模型による時空カオスの研究が猛威をふるっていて、自分が提案したらそういう研究をやっていただろうけれど、他人がやっていたので気にいらず、定性的な普遍性クラスの考え方も気にいらず、うーんんんと腕を組んで、「よし、PDEが示す時空パタンの振る舞いを真似するのに必要な自由度を明らかにしよう」という問いをたてて、そのために、そういう模型をつくって「ほれ、似ているだろう」から入る路線をとった。

KS方程式の場合、サイズL の系に対して、4L/(2\pi\sqrt{2}) 個の変数でいけそうなことは何となくわかるので、その変数で発展ルールを書いてしまおう〜ということをやっていた。正直にいうと、学会発表を申し込んでいたのだけど何も出来てなくて、かなり土壇場でバタバタやっていた。それで何とか形になったのがその日だった(はず)。

学会は最終日の朝一番の発表で聴衆は10人以下。それでも、豊木さんから「その方法は他の模型にも使えるのか?」という至極もっともな質問を頂いて、「いえ、KS方程式に特化した話です。」と答えた。いくらマニアックが好きだといっても、やはりいきすぎだろうなぁ。。しょげかえって、学会後その研究は棄てた。研究テーマの選択については、その後さらに迷走が続く。

ほとんど同じ頃だったか、慣性多様体の考え方を知った。ポケットマネーで Temamさんの本を買った(=洋書専門書は自分の小遣いで買っていた)のはもう少し後だったと思うけれど。これは僕が見たいことに近いと思った。散逸系のPDE の長時間の振る舞いは"実効的に"有限次元空間におちるということを数学として議論したものだった。これは面白いのだけど、一般的すぎてどうにも(僕の)使い物にならない。というので、折角、本まで買ったのにそのままになった。

時は流れて、 2年ちょい前のセミナーで竹内さんが、有効自由度数を接空間の情報から数値的に構成する研究を紹介してくれた。[確か、PRL にでているはず。(すんません、僕は論文は見ていない。)]その日の日記にも書いたけれど、構成方法は合理的で、汎用的で、しかも、KS の場合に20年前の値になんとなく近そうなので驚いたのだった。

今日、竹内さんからのメールで、その研究の状況をお聞きして、(竹内さんたちの方法によって評価された)有効自由度が、4.01 L/(2 \pi \sqrt{2}) になっていることを知った。まるで冗談のような数字で、僕が作った(最小)模型の変数の数とほぼ完全に同じではないか。。

僕はどうやってその数字を出したのか。何かの理論を構築して積分しまくって評価した結果その数字を得たのか...、当然、竹内さんは気になるので連絡を頂いたのだった。

実は、理論は全くない。「何となくわかる」という理由は説明できるけれど、それで合っている根拠はない。(だから実際にその変数で最小模型を構築してまねっこになっているかどうかを具体的に見せたのだった。)そういう身も蓋もない説明を正直に説明した。(有効自由度の数は大体あっているとは思っていたけれど、「そこまで」合うのはやはり偶然だろうなぁ。)その説明をメールで書いていると、紹興酒を飲んで「よし!」といって店を出た風景を思い出して、強烈に懐かしくなったので、この長い日記になってしまった。