金曜日

およそ1ヶ月にわたって各方面と調整したり、議論したりしてきた案件二つがとりあえず一区切りついた。ほぼ同時に。どちらも1月末までにやらないといけなくて、来週、僕はずっと関東なので、今日が事実上最終日だった。僕の動き方について、(後づけの)今から思うと、色々ともっとよいのがあったかもしれない。でも、これから別ステージがはじまるので、これまでのことはこれまでのこととして次のことを考えよう。

研究は、伊丹問題がひっかかって気持ち悪くて仕方ない。業務の合間に参考データをとるためにjobを流しているが、不思議なんだよなぁ。。何か、一番大事な部分を見切っていない気がする。また、論点が難しい問題なので、その整理も至急しないといけない。(断熱ピストン問題をミクロから考える、、というのを最初に聞いたのは、実は、シナイ先生の講演だった。98年かな。キャレンは読んでいたので、問題は知っていて、それを力学からアプローチする..というので、ほう..と思ったが、悲しいことに中身がほとんど理解できなかった。質問もできなかった。シナイ先生が講演している動画は部分的に復元できるけれど、残念なことに「無声映画」だ..。はは。)その論点に関連して、「修論発表preview会」でさがわさんが伊丹くんにしたコメントがすばらしく、しまったなぁ、そこはあらかじめ抑えておくべきことだった..と頭を抱えた。

さがわさんの世代だと、ゆらぐ世界のエネルギー論/エントロピー論が自明レベルからスタートしている。やはり、その理解の仕方が一歩違う気がする。僕(たち)は、ゆらぐ世界に何かの構造があると思いながら模索していて、ゆらぎの定理の意義を確率過程において認めるのはホルヘに遅れ、仕事等式はクリスに遅れ、90年代発見物語に参加できなかった。やろうとしていたのに。NESS-> NESS の第2法則(Landauer-Oono-Paniconi)をゆらぐ世界で捉えることでかろうじて存在をアピールできたが、それらの理解の仕方が同時代的になって体系化されていない。教科書でも書けばいいのかもしれないけど、研究が進展しているときに教科書を書くのは難しい気がする。(関本さんの本は素晴らしいが、「研究本」であって、教科書ではないよなぁ。)

93年かな。基研研究会で柳田さんの講演を聞いた日の夜、関本さんとこれからのことについて話をした。「k_BT オーダーの世界で熱やエントロピーをどうとらえることが問題かな...」とおっしゃった。僕もその後その路線で考えていたけど、Langevin を軽視しすぎていたのだな。何となく、力学からみないといけないと思っていた。「力学における熱問題は、永遠の課題だな(=皆が興味を持つけど、どうにもならんということ)」とは池田研介さんが当時(92−93年)おっしゃっていた。[昔の風景を再生していると、上記文脈と関係ないが色々思い出した。その93年のとき、「これからは、狙って研究をする」と力強く宣言をしたのが金子さん。(CML -> GCM の時代を読む路線から転換して、理論生物に転向するという意味。)確か、その1年前、「金子君が狙って研究したらうまくいかなくなるだろう」と仰ったのが蔵本さん。これらが20年前か..。茫然とする。いや、言いたいのは、ゆらぐ世界で熱力学(エントロピー生成)がひきつがれるのは全然自明じゃなないんだって〜!!

ところで、さらにその20年前。川崎先生は、ゆらぎの定理と同じ内容の恒等式を論文で書いている。ご本人は「そんな些細なこと」は全く自覚していない、という、真の意味での化け物なんだけど。いやしくも非平衡統計を研究しているといっている以上、超えないといけないのは、ここなんだけどな。