火曜日

熱力学講義:4月、5月は、構成を少し変えた影響で流れのバランスを失ったり、説明の途中で頭が真っ白になって5分くらいの中断があったり、説明にとまどったり、、と色々とまずいことがあったが、6月以降は、講義前の集中と準備を丁寧にするようになり、最近はよい感じのように自分では思う。

先週(11週目)は、ゴムだけで90分爆走。ひっぱって熱くなることを理解するのを短期的な目標にとりあげるが、背後に隠れた意図があることも最初にふれておく。まず、熱力学の知識として必要なことを黒板の半分に書いておいて、何をどう使うかというセンスを含めて解き方の説明をする。特に、熱容量一定の条件だけから、ばね定数が温度に線形依存することを示して、驚いてもらう。(既に何度も出てきたのと質的に同じだから、理解していればそんなには驚かないか。)そのそれぞれの項の大きな極限で、弾性の起源が全く異なることを論理的に理解し、特に、内部エネルギー変化がゼロの極限があることを絵的に不思議に思ってもらう。そして、そのミクロな絵を想像することで、エントロピーのミクロな描像をつかむ。最後に、ボルツマンの公式を紹介して終わる。

今週(12週目)は、風船問題だけで90分爆走。箱の中で仕切り板で区切られた気体の例から、熱力学変分原理を導出する。このボーナスで、圧縮率の正値性を示す。4月に、ファンデルワールス気体のおかしな領域(圧縮率負)のおかしさを説明せよ、というレポートを出してあったが、その解答に相当する「安定性」の考え方を説明する。以上を踏まえて、風船問題に入る。まず、単体の風船について、前提条件を完全に明示して、ラプラスの式を導出する。そしてそれをつないだときの熱力学変分原理を定式化し、拘束されていない変数に関する自由エネルギーランドスケープを書く。要領悪く計算すると泥沼になるが、もっとも簡潔に計算するコツを具体的に見せる。最後に、実験でみられるプラトー現象が、この計算ではどう理解されるべきなのか、について、絶対に正しいことだけ述べて、終わる。(実験せよ、というレポートを2週間前に出してあって、実際に実験した学生は過去最多だった。)

この2週間は、単発の講義x2 として、完成度が高いと自分では思う。説明の仕方、特に、喋り方にはまだ改善の余地があるけれど。。12週目の内容は、これまで時間切れになって完全に出来なかったのを、はじめて完全な姿として収めることができた。(例年より6週目までを少し急いで、後半に時間をかけるようにした。)

来週の最終回はどうしようか。。(ジュール=トムソン、多成分系、はねかえり係数、情報、悪魔、非平衡....、うーんん、、、などのトピックが頭を走っている。雑多になるのはよくない。)