火曜日

奈良会議1日目:僕自身の研究は物質に近いところにない。特に最近はその傾向が強い。勿論、物質を軽視しているとかという表面的なことでなく、自分が真に新しく意味があることができるであろう研究の性格からきている。好き嫌いでいうなら、物質に関する「優れた研究」を聞くのは大好きである。化学も含む。最近、駒場に着任された若い先生方の研究とか研究紹介の文を読んでいるだけで楽しい。

ひとつでもピントがあって、次につながればいいなぁ、くらいで臨んだ初日のテーマは高分子。前から話題としては知っていた「準結晶配置を高分子でつくる」という名大松下先生の話は、講演を楽しんで聞けたので、場違いなのを覚悟の上で、「結晶でも、準結晶でもないけれど、ゼロエントロピー密度という意味でオーダーする配置というのが数学的にはある。それを実現できないか?」という質問を踏み込んだ。何を聞かれたか分かるはずもないのだけれど、その場で少し(僕としては想像以上の)やりとりができて、あとでお話します--とつないだ。話をする機会を作るための質問だった。

昼休みに、松下先生に説明をする。話をするのは初めてだったが、凄まじく理解力が高い。あっという間に本質的なことを理解された。正直いって、気分だけでも分かってもらえれば上出来だと思っていたけれど、問題をほぼ完全に理解してもらえたと思う。(同業者でも中々理解してもらえないのが多いんだけれど。)こういうのは気持ちがいい。

勿論、問題が分かっても、即実験とはならない。実際の物質で実現できるかどうか全く自明でなく、手のだしようも当面はない。ただし、そういう面白い問題があることを分かっていただければ、何かのときにチャンスがあるかもしれない。こちらも、簡単な数学模型だけでなく、高分子を意識した模型での実現を考えようかなぁ〜と思っている。

簡単な数学模型の範囲で調べることはたくさんある。今日の話でも、「そのような秩序を実験でどうやって検出するか?」が当然でてきたが、今のところ、絶対的な答えはない。(数学的に作る場合は神の声でわかるけれど。)この1週間ずっと持っているほるへの長い論文は「その秩序検出装置の提案」と見ることもできるので気にしている。アイデアがいるけどね。また、5月模型specific の懸案事項として、共存状態のpure stateの数についての数値実験をはじめたい。これは出来るはず。

香港、ソール、奈良と実に色々なタイプな人とこの件について話をしてきた。うーむ。やはり、これは勝負どきだな。