月曜日

予定通り、論文をarXivにあげた。1月くらいから書き始めて、3月公開を目標にしていたが、スケッチだけで終わった。4月に再開したが、細部が気になってきた。4月は現在の付録II節を考えなおし、5月はミクロから考えなおし、5月下旬には、本文の計算もやりなおしかも、、、という事態になった。そこで深呼吸しなおして、もういちど本文の議論の基盤となっている中川さんのノートを丁寧に読み直し、論旨を徹底的に洗いなおした。実際、中川さんのノートは「ほぼ」仮定なしになっていたのだが、最後の一点で「仮説」を使っていた。それは示せるものではないようにも思ったが、6月前半の筑波・水戸出張の折に解決した。そこから論文書きに戻った。6月にver.0;7月24日にarXivにアップという予定にしていたが、これはきつかった。重い仕事がいくつか入っていて、中々時間がとれず、目いっぱいのところで何とか予定どおりになった。7月の会議中と会議後は中川さんに作業をまかすことも多かった。(中川さんも時間がほとんどとれない中の作業で。。)8月上旬に投稿予定で、それまで意見やコメントをもらう。

さて、この論文は(どこかで間違いがあるということがなければ)凄いと思う。そのもっとも独創的なコアは中川さんから来ているが、それを分かりやすい問題の解決に使って綺麗にはまったのは驚きだった。「出来過ぎた感」も少しあるので、どこかでミスっているかもしれない、という一抹の不安は常にある。自分たちなりにできる限り丁寧には考えつくしたので、論文として公開して、その後あれこれ検討して、そうだなぁ5年後くらいに価値判断をすればよいと思う。

追記:研究そのものは中川さんが(数年にわたる)長い試行錯誤の末に得た「昨年5月のノート」が僕にとっての始まりだった。そこで大域温度の定義とその可能性が議論されていた。ノートをもらったが、すぐにフォローできるものでなく、論旨と大枠を理解するのにしばらく(2週間くらい?)かかった。これは確かに面白いアイデアだが、どういう位置づけなのかあれこれ夢想していた。その段階の計算ステップを全て(表面的に)理解したのは8月だった。(現在の言葉では、特異性がない場合の局所平衡の表現で、付録Iを使えばすぐに導出できる。)ただ、「熱力学拡張」はこういう形式論ではだめだと思っていたので、何か実験に関わることと結び付けよう、としていた。複雑なことを色々考えていたが、単純な定圧熱伝導気液転移でいい、ということを納得したのは10月だった。今回の論文の主題に限ればその時点がスタートともいえる。(今回の論文では、熱力学の拡張そのものは敢えて議論していない。それについては長い論文として別公開する予定。)