土曜日

あっという間に9月になっている。論文の改訂作業は続いている。膨大な査読者コメントの全部に何等かの対応をして論文に反映させたり、応答を考えたり、8月上旬の穴埋めを考えたり。このあたりで、8月上旬に田崎さんに指摘された問題を明示的に書いておこう。

公開されているプレプリント(=投稿版とほぼ同じ)では、変分原理が導出されているように見える。正直にいうと少し違和感があったのは事実である。定常状態の条件が明示的でなく、局所平衡と線形応答領域だけで決まるのは何か変だった。でも何度チェックしても問題がないように見えたのでそのまま公開した。ところが、、、とある関数の微分可能性が自明ではない、と田崎さんに指摘された。まぁ、微分係数の連続とか厳密にいえば怪しいけれど、今の場合は、絵を書いたら、まぁ連続だと考えるのは当然に見えた。ところが、その絵が間違っていた。ご都合主義的に(=成り立ってほしいときに成り立つように変換して)絵を描いていた。これをは一般には成り立ちそうもないので、論旨としては、その微分の連続性を定常状態の条件として仮定する、、ということになる。

そのままでも論文の修正としてはわずかで済むかもしれないが、物理としては非常によくない。定常状態の条件というのはある種もっとも物理の核心のような部分なのに、そこで(物理として解釈できない)ある関数の微分の連続性とかを持ち込むのは筋が悪すぎる。そこで、それを破棄し、正面から新たな「前提条件」を模索しはじめたのだった。

最初の数日間で、一息ついたのは、「熱力学関係式が成り立つ」のを定常状態の条件とする、という論旨である。まぁ、当初のノリに近いのだが、具体的にその条件から変分原理が成り立つことは示せる。ただ、実際に示すのは決して自明ではないのだが、中川さんによると「それは自明」といわれるもので、そう思って数式をあれこれ戯れると、まぁそうかな、、という気がしてくる。熱力学関係式と変分原理の関係は論理的には別物だが密接な関係があるのは避けようもないのは式をいじらなくても分かるし、そもそも熱力学のプロでなければ変分原理と熱力学関係式は縮退しているかもしれない。

ともかく、それを保険にして、新しい案を模索した。。。というても、研究者のタイプは色々であり、僕はこういうとき「色付きイメージ」を見ることができず、アイデアがでない。中川さんからでるアイデアを僕が論理的に検証するというパタンを繰り返していった。↓の日記で書いたあとも色々あって、結局、現在、それからの変種を出発点にとる論旨が残っている。まぁ、如何にも熱力学の設定っぽいね、、という要請をするのだが、熱力学関係式を直接要請するわけではない。そして、その要請から、変分原理も熱力学関係式もでる。その条件が意味していることについてまだ完全に理解しきっていないので、現在もまだ検討を続けている。

この問題は、ほぼ1ヵ月くらいに渡って、僕の頭に重くのしかった。査読レポートに対する応答時期と重なったので、締め切りつきで模索を続けることになって相当に苦しかった。でも、何となく(当面の)終わりが見えつつあるかなぁ。。